谷口巳三郎氏エッセー「熱帯に生きる」より

わたしの卒業式
 私の居住する北部タイ、パヤオ県に唯一の農業高校と手を携えて昨年6月より当農場を教場として始めた学校外寮教育の成果をもって、昨年の入学時に450名の新入生中より自らの意志により集うた20名の精鋭生徒がこの3月27日の佳日、無事終了式を迎えた。
 公立学校への入学を許可された者が本人の希望とはいえ、その学校外の機関へ就学することが許されるということは日本においては考えられないことであるが、昨年、タイ全国でもこのような学校外教育機関として指定され実際に生徒を預かり教育した場所は我々の農場だけであったらしい。
 発展途上国のタイ国が20世紀末の経済万能の世界風潮に乗り遅れず経済発展を遂げるために国民の中に大多数を占める農民階層の就学率を上げ高等教育を施すことにより国民の教育水準を上げるために採用した農業教育のひとつの型と考えればよいと思う。
 我々はこの3月27日に終了式を行った。我々の農場では今までも一貫して青年教育を行ってきたが、その数も少なく、又入場の期日もまちまちであったため終了式などというものを執り行ったためしはなかった。私自身、形式的なことを拘ることが嫌いな性格も理由のひとつだった。
 しかし、この20名の生徒の1年にわたった学業終了にあたっては何かをしてやりたいと思いスタッフにも意向を打診してみたが、何せ皆、昨日今日、自身が卒業してきた者ばかりで式を執り行う側に立った経験がないため、ここは私のアイデアで、在り来たりの卒業式の真似はやめ、我が21世紀農場の終了式に相応しいやり方で行おうと決めた。
 当日、遠方より来る生徒の帰路のことも考慮し、朝8時半より式を行うことにした。
 教務主任のビンが上手に招待状を書いてくれたせいか、生徒1人に2人以上の親や兄弟姉妹が集まってくれ、式が始まるまで三々五々連れ立って農場内を散策して歩く姿が見えた。
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