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谷口巳三郎氏エッセー「熱帯に生きる」より

わたしの卒業式
 次いで一呼吸置くと、私はゆっくりした口調で「Time flows like an arrow」と云って言葉を続けた。「300日は矢の如く過ぎ、此処での教育は終りました。さて、諸君、此処での10ヶ月間の研修の日々を思い出してみて下さい。私は皆さんに"先生方は皆、頑張った、"と胸をはって言うことが出来ます。"生徒諸君も又よく頑張った"と親御さんに報告することも出来ます。時には規則を破る生徒もいましたが退場にまでは到りませんでした。300日の間、生徒諸君がどの様な勉強を身につけたのかについて考えてみたいと思います。
 一日はまず5時半の起床に始まり、体操、ランニング、食前作業、そして朝食後、毎朝8時に国歌斉唱と国旗を掲揚し、生徒としての心構えを唱和し、次いで我が21世紀農場で作った次の如きスローガンを声高く唱和します。ここで来賓の皆様、御父兄の方々はこのスローガンをお聞きになり、当農場の教育が目指すものをご理解下さい。
 先ず始めは、・・・」生徒は会場に響きわたる大声で「私は家族の希望の星である」と唱えた。そして、「私達は国の宝である」「我々は人類の食糧を生産する戦士である」と私の指示に従って、毎朝の朝礼の時と変わらずに臆することなく会場一杯響きわたる大きな声で唱和した。今日の此のスローガンの唱和は予め生徒と打ち合わせたものでなく、挨拶の最中急に思いついてやらせたものだった。
 「・・・御父兄の皆さん、只今の皆さんの子供達のスローガンの内容をお聞き下さいましたか。特に始めの、"私は家族の希望の星である"と毎朝今のように大声で唱える彼らの姿をどの様に受け取られましたか。"嗚呼、私の息子は立派に育っている"と思われましたでしょうか。生徒たちは、まだ高校一年を終えたばかりで、将来の長い人生には悪い誘惑もあるかもしれません、御父兄の皆さんも彼らが悪に染まらないように、今日のこの素直さが将来も長く続きますように御訓導下さい・・・」
 生徒の後ろに席を接して座る父兄のあちらこちらで頷く姿が見られた。
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